短編小説を書いてみた1
はじめに
眠っているとき、夢の中で小説を書いたり、物語を書いたりすることってありますか。私はよくあります。
実際、寝ているときに話の続きを考えたりすることは多かったりします。
今回もその類の短編小説になるのですが、面白そうだったので出してみることにしました。
一応、yui(自作ノベルゲームのタイトル)のスピンオフという位置づけかな。
ガラスの上
私は、さっきまで人工衛星の打ち上げテストをやっていたはずなのだが、気がつくと、闇の中に立っていた。
闇と言っても、完全な暗闇ではない。足元にはかすかな青白い輝きが見える。
私は、思い切って足元を覗き込んでみた。すると、そこには、私が住んでいたはずの巨大な星が、ゆるやかなアーチを描いているではないか。
「星の周りに、こんな巨大なガラスが置いてあるなんて…」
ガラスが巨大に思えたのは、これがどこまでも続くだろうと直感していたからだった。
見えないガラス板の上と表現するほかないこの場所だったが、私は、次第に怖くなってきた。
なぜか先程から足元がやけに後ろの方に引きづられているような感覚があるのだ。
考えても見てほしい。もし私が無意識のうちにあの下に見える巨大な星に引き寄せられているのなら、そのうちどれだけ走っても抜け出せなくなり、燃え尽きて消えてしまうだろう。そのような場所に私はいるのだ。これが恐怖と言わずなんと言うだろう。
そんなこともあり、私は、できる限り端の方に移動することにした。
歩いても歩いても変わらない景色だったが、それでも歩いていると、向こうの方に人影が見える。数人が座り込んだり、立っていたりするようだった。
「こんな場所にも人がいるのか?」
私はそうつぶやきながらも、自分がいるのだから、他の人もいるだろうという結論に達した。いや、達したというより、それだけが希望の光だった。
近づくと、やっぱり人だ。立っている人に声をかけられた。
「ああ、あなたもここに連れてこられたんですか?怖かったでしょう。さあさあ、こちらへ」
私は、彼が手招きしたその場所まで歩いた。
そこに着いてみると、その場所は他の場所とは全然違っていて、それまではわからなかったが、足元に見える青白い輝きが一層鮮やかに溢れ出ているかのような場所だった。
「ここは一体?」
私は彼に質問した。他の人達もどうやら同じような場所にとどまっているみたいで、座ってたり、寝ていたりしている。
「ああ、そこは境界。この世界において一番マシなところですよ」
「境界?」
「ああ、そうです。あなたも体感しているとおり、ここに連れてこられた人達はみんな、足元に見える巨大な星に引き寄せられているのですよ」
「そんな感じはしていました」
私はそうつぶやき、彼は話を続けた。
「そして、ある地点を超えたとき、もう戻ってこられなくなるのです」
「やっぱり、そうでしたか!私も危ないと思っていたんです。それなら、私はもう少しあっちのほうに行ってみようと思います」
私はそう言って歩き出そうとした。しかし、なぜか彼に引き止められた。
「ああ、それもやめたほうがいいですよ」
「なぜです?」
「ここを超えてしまっても、戻って来られないからです。いつの間にかガラス板は消え、行く方向をコントロールできなくなりますよ」
「そ、そんな…」
「だから最初に言ったでしょう。ここが一番マシだと」
「どっちもアウトだからですか?」
「ああ、そうです。ここは無意識のうちに移動している距離が最も少ないんですよ。あっちの方になると、たった数時間を寝ているうちに、もうダメですね。戻ってこられない。駆け出しても間に合わず、やがて足元から燃えだし、消えてしまう」
「…それは怖い」
「あなたも最初に来たときはあそこらへんだったのでしょう?歩き続けて正解ですよ」
「どのくらいこの場所に?」
私は、興味本位で質問してみた。
「ああ、それは、覚えていないくらい長くです」
「それで、食事やトイレはどうしてるんです?」
「ああ、食事やトイレなどは人工衛星が1日に1度、ここを通り過ぎるので、そのときに調達を。この人数ですと500年分くらいはありますよ」
「それはいいですね」
私は、心の底からホッとしてそうつぶやいた。
すると彼は、その思いに釣られてか、そのことを口にしたみたいだった。
「ああ、それに、何年かに一度、ここにはあれも来るんですよ」
「何がですか?」
私は、こわごわと聞いてみた。
「鉄道です、銀河鉄道」
「ま、まさか!?」
「ありえないこととお思いでしょう。その気持ち、わかりますよ。ですが、このような場所で、ありえないことなどあるでしょうか」
「ほんとに、それがここに?」
「私は前回、どこに連れて行かれるか、それが怖くて乗れなかったのです。次もどうなるのかわかりません。ですが、それがここに来るのは確かです。この見えないガラス板もそのために設置されたものなのでしょう」
「私、乗ります」
私は、考えるよりも先にそう口走っていた。
「ああ、そうなるといいですね。ここに留まっている人の中にも10人に2人は乗って、どこか遠くにいかれますよ」
彼は、私の挑戦的な言動を意にも介さず、和やかにそう言うのだった。
/novel
登場人物
主人公は、アイが銀河鉄道に乗るとき偶然乗り合わせた乗客の一人