2017-03-04 / syui

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未成年者の人権

はじめに

未成年者も人間であり、かつ国民であることに変わりないので、その人権は当然ながら憲法上保障されています(14)。

ただ、人権は本来、成人した者を対象にしたものであり、かつ、未成年者は判断能力が成年者に比べて十分ではなく、そのため人権の誤った行使などにより回復不能な損害を被るおそれがあります。このような理由から、法律によって後見的(未成年者保護の目的のため)に未成年者であることを理由に規制が必要になることがあります。

ここで、未成年者を対象に、特別な人権制約が必要最小限に限り許される場合があるのです。今回そんな感じの話になります。

具体的には、酒や煙草、選挙権(15)、政治活動の自由(19,21)などですね。これは、未成年者の身体的保護のみならず、精神的保護なども含まれます。精神的保護というのは、例えば、政治などが権利のぶつかり合いによって、利害関係が飛び交うことがあるため、それに介入することで攻撃されたりすることもあるためです。未成年者の自己防衛機能は成年者に比べて十分ではありません。そのため、その精神的自由を保護する必要があると考えます。

ここで、その規制が必要最小限の規制であるか否かをどうやって判断するのかというと、制約される人権の性質や未成年者の年齢、他に取りうる手段の有無、目的との合理的関連性などを考慮して判断することになりそう。

では、実際、未成年者の人権と関連しそうな事案ぽいものを使って検討してみたいと思います。

例えば、「公立中学校で所定の髪型が校則で定められている」という話があったとして、これをどのように考えていくかですね。

事案ぽいものの検討

「公立中学校で所定の髪型が校則で定められている」という話があったとして、まず、当該校則は未成年者の人権を侵害するものかどうかという検討からはじめることになります。あくまで頭の中での思考順序としての話ですが(個人的な)。

で、私は当該校則は未成年者であることを理由に規制されているものではなく、その目的はあくまで組織の風紀を維持するためのものだと考えますので、未成年者であることを理由に、その人権を制約するものじゃないと考えます。よって、未成年者の人権の話はしません。

じゃあ、この校則は一体なんの人権を侵害しているのかというと、一般的な髪型の自由への侵害だと考えます。

よって、髪型の自由の話からはじめて、髪型の自由は新しい人権(13)として認められるかという話になり、新しい人権は13を根拠に認める必要性はあるが、新しい人権を安易に認めると、人権のインフレ化を招き、人々の不自由につながるので一定の条件を満たした場合のみ認めるということになり、その一定の条件は人格的生存に不可欠かという基準になり、では、髪型は人格的生存に不可欠かというと、不可欠ではないので、あくまで自己決定権の一種として認められるだけとなります。長くなるので一気に簡潔に書きました。

次は、校則の必要性などを説明します。校則は、専門技術的知識や現場の判断が尊重されるべき領域の問題であり、かつ裁判所の判断にはあまりなじまないことから、広めの裁量が許されると考え、広めの裁量が許されるための判断基準(規範定立)を立てることになります。具体的には、目的との合理的関連性があれば当該校則は認められる(合法)みたいな話をすることになるでしょう。

で、最後に先程立てた目的との合理的関連性の基準に当てはめを行うのだけど、具体的には、当該髪型を制限した校則の目的である学校の風紀維持と、そのための手段として、髪型を制限することは合理的関連性があるかという話になり、まあ、奇抜な髪型を想起した上で、関係なくはないということになり、当該校則は合憲という結論を導くことになると思われます(あくまで私の場合)。

ただし、髪型に一定の自由の幅を持たせる校則であることも重要で、もし自由の幅が全くないとかだったら(例えば坊主とか)、そのような過剰な校則とせずとも風紀維持は可能であり、違憲という判断もあり得るので、この限りではないです。分かりにくいと思うので、以下、これについてちょっとだけ解説します。ポイントだけ。

この場合は難しいんだけど、事案を見て判断基準を決めたほうがよいと思っていて、例えば、校則が「髪型は丸坊主のみ」とかだった場合、基準は他の選びうる手段の基準とかにして、髪型の自由も新しい人権として認めたほうがいいと思います(考える順番逆だけど)。そのほうが違憲(違法)に持ってきやすいので。具体的な説明としては、「昨今においては、髪型は自己表現、自己実現(21)の一種であり、人格的生存に不可欠になりつつある」とでも言って、髪型は新しい人権の一つとして認められるとしつつ、しがたって、「その制約は厳格に判断。具体的には、目的との関連性があり、かつ、他の選びうる手段がないことが必要」みたいな、そんな感じで。

ここで、もし事案が抽象的なら、どちらの場面にも対応できるような説明を行って、最後に但しとフォローを入れる感じで書きます(大抵の場合は)。反対にもし事案が具体的場面を想定したものなら、その事案に即した内容を書いていく感じになると思われます(主に判断基準、規範定立辺りを)。例えば、問題文に具体的な校則が書かれていた場合、今回のケースでは髪型の自由の選択の幅がポイントで、選択の幅が狭ければ私の場合、後者(違憲)の説明でいいんじゃないかなーという感じ。髪型選択の幅が広ければ前者(合憲)という感じ。

そんな感じで、各々が適当に調整しながら考えていけばいいのでは、という感じです。とても適当な説明でしたが、これでおわり。